原田裕史氏学習会レポート

たんぽぽ舎原田氏との対話学習会(2月24日)

会のYさんがまとめてくださいました。

自分で考えるための判断材料としてご参考にしていただいたら幸いです。


1.原田氏による放射線の話~福島の原発事故の話を織り込みながら~
◆原発爆発による東京への影響

昨年3月15日と3月21日、東京に放射性物質が流れてきた。15日の段階で被曝を防ぐことができれば、初期の被曝量が減ったため、それ以降の対策が楽であったはず。15日には国内のモニタリングポストの値も上がっていたので、本来はメディアが「雨に濡れないように」等の注意報を流すべきであった。実際には、3月が一番危なかったのに、5月になって様々な情報が出てきた。遅すぎる。

◆情報について

今回のような事故においては、大体の予想や計算結果をできるだけ早く出すことが大切。例えば、火山学者である群馬大学の早川教授は、風向きなどから放射性物質の拡散予測を早く出していた。文科省も情報は出していたが、避難すべきところにいる人々には届かなかった。

◆福島の事故とチェルノブイリ

 福島の事故がチェルノブイリを超えたとの報道もあるが、それは言いすぎ。チェルノブイリは2回大爆発して1,000キロ先まで汚染されてしまった。これに比べたら、福島はまだ小さな爆発だった。問題は、地震が今来たらどうなるかということ。冷却できないといった大騒ぎになるかもしれない。また事故が起きたら東京も危なくなる。

◆原発事故時の放射性物質

放射性物質は、他の化学物質に比べて計測しやすいという特徴がある。原発事故時には、ヨウ素、セシウム、ストロンチウムが主に問題になる。ヨウ素は甲状腺に、ストロンチウムは骨にたまる。ヨウ素の半減期は8日なので、今現在はほぼ無視できる。セシウム134は半減期2年、セシウム137は半減期30年だが、これらのセシウム2つ合わせても2年間で半分くらいになるだろう。ストロンチウムはセシウムほど出てはいないが放出はされている。これについては発表がないと安心できない。

◆放射能の害

これ以下では安全という「しきい値」は存在しない。また個人差が大きい。放射線に弱い人々は一定数いる。「しきい値」がないので、害の評価は難しい。

◆放射線を浴びることの意味

「利益」とのバランスを考える。例えば、医療被曝であれば被ばくの危険と診断の利益とのバランスの問題。レントゲンは安全だから撮るのではなく、患者に利益がある場合に撮るべき。ただし、日本は医療被ばく大国であり、被ばく量が多いCTスキャン等の撮影は、不必要なら避けるべき。

◆大人と子どもの違い

日本の国内法の規制基準の元はICRPの基準。ICRPの基準を厳しいという専門家と緩いという専門家がいる。大人が自ら選ぶ職業の基準としてなら20ミリシーベルト/年は許容できるが、一般公衆は1ミリシーベルト/年であるべき。胎児や子どもは細胞分裂が活発なので、大人以上に配慮すべき。大人が子どもを心配するのはよいが、子どもにストレスをためさせないようにすべき。

◆食品の基準

日本の暫定基準値である500ベクレル/年は緩すぎる。この数字は、飢え死にするよりかはましとされるレベル。しかし、そういう言い方ではなく「500ベクレル以下なら安全です」と言っていたのが問題。100ベクレル/年になれば、クリアランスレベルとの整合性が取れてくる。

◆内部被ばくを避けるために

汚染された水や食品は食べない。例えば、東日本の太平洋側の海産物は、子どもがいたら自分なら避ける。また、帰宅時には手洗い・うがいをするべき。加えて、マスクを着けたりするのもよい。また、雨に濡れないように、泥などに直接触らないようにすることも大切。

◆食事等の対策について

カルシウム不足にならないように(=ストロンチウムを取りこまないように)バランスのよい食事を摂るべき。ビタミンCなども十分摂取すべきが、サプリに頼りすぎるといったことはアンバランス。また、特定の食品や製品に偏るのはリスクを高める。色々な種類のものを摂ることでリスクを分散すべき。例えば、ペットボトルの水だけに頼りすぎるのもよくない。

◆現在の東京の汚染状況

それほど心配しなくてもよいと考える。疎開したければ止めないが、逃げるにしてもコストがかかりリスクもある。ただ、東京で暮らす上では食べ物に気をつけるべき。一方、たんぽぽ舎で測定しても500ベクレル/kgを超えるものは福島産であってもそうそう出ない。水道水もほとんど出ないかごく微量。測ってみないと分からない。測れば「ホットスポット」は時折見つかるであろう。ホットスポットは避けるべき。もともと、関東の自然放射線量は低い。家に閉じこもるのではなく、外に出て行く方がいい。ただし、手洗い・うがいが大切になる。


2.事前に寄せられた質問への回答
(1)福島で給食を丸ごとミキサーにかけて測ったら不検出だったとのこと。東京ではどうであろうか?

測ってみないと分からないし、測るべきである。おそらく、丸ごとミキサーにかけたら不検出になるだろう。汚染度が高いものと低いものを混ぜると薄まるからである。

(2)内部被ばくが心配。知らないうちに子どもが被ばくしてしまうことが怖い。

関東はもともと自然放射線量が低かったので、被ばく量は事故後に2倍くらいになったという感じだろうか。精密な調査をしないと影響は分からない。
(3)花粉の季節の対策はマスクと手洗いうがい以外に何があるか?

マスクの種類を防じんマスクにすることは一案である。
(4)胎児への影響が心配。

放射線を避けるにこしたことはないが、影響(奇形など)が出てくるとされている値は100ミリシーベルト/年。もちろん、胎児に集中的に被ばくするような場合には話は変わってくるが、そのようなことを防ぐために、例えば妊娠中のレントゲンは胎児を被ばくさせないように注意を払っている。ただ、セシウムは胎盤に集まるともいい切れない。動物実験では動物によって結果が異なった。しかしながら、一般的には、セシウムは体の中であまり不均質に溜まることはないとされている。

(5)放射線の影響に男女で差はあるのか?気をつけることに差をつけるべきか?

生物学的に差はない。しかし、放射線差別など、社会学的には女性の方が影響は大きい。女性の場合、思春期の一時期に放射線への感受性が高まることがあるが、成熟すれば大丈夫になる。実際、卵子などは結構丈夫にできている。また、妊娠直後は放射線への感受性が高くなる。そうであっても、福島でも東京でもそう心配することはないだろう。今より2ケタくらい放出量が大きければ影響が出るかもしれないが、今のレベルなら誤差の範囲と言える。

 

3.当日の会場からの質問
(1)給食の食材が安心できない。今でも福島産のものが使われているし、群馬・栃木・千葉のものが多い。産地変更の話を持ちかけると区(渋谷区)が渋る。風評被害につながると言われてしまう。

例えば、南相馬市は福島産を給食に使っていない。給食では、放射能で汚染されていない食材を使ってほしい。子どもたちに、よく分からない食品や食材を与えることが生産者を守ることではない。東電なり国なりが生産者に保障すべき。千葉や栃木、茨城の食材については測った上で汚染されていなければ使用してもいいのではないか。区に対しては、特定の産地を避けてくれと要望するよりかは、実際に測定するまでは特定の産地を避けてほしいとの条件をつけてみたらいかがか。
(2)風向きについて、風が来そうなら洗濯物を室内に干している。どのように考えるか?

1号機以外の原発建屋にはまだ覆いもないため、心配なら外に干さなくてもいいと思う。今は、福島から直接飛んでくるものより、過去に降ったものが舞い上がる方が多い。もちろん、福島第一から新たな放出があれば怖い。4時間くらいで東京に放射性物質が到達してしまう。

(3)新宿より東には、妊婦や子どもは住めないとのツイッター情報もあるが、どのように考えるか?

物事には根拠が必要なので、どこまで根拠をたどれるかによるだろう。許容範囲については、人によって対応が異なっていいのではないかと考える。その土地に愛着がある人もいる。個人的には1ミリシーベルト/年でいきたいが、5ミリシーベルト/年くらいまでなら。危ないけれども暮らせるというレベルか。
(4)福島第一に再び何かが起こったとして、避難すべき時に見るべき情報は?

普通のテレビやラジオでいい。昨年3月も、結局パニックは起きなかった。何か起こったという報道があったとしても、東京はパニックにはならないだろう。昨年3月15日は逃げるべきだったが、逃げなかったら駄目だったわけではない。不幸中の幸いで、低線量被ばくですんだ。
(5)保育園で牛乳が出されるが、拒否した方がいいか?

測ってみないと何とも言えない。もともと牛乳は飲まない方がいいとの話もある。東京で流通している牛乳については、現時点では放射性物質が検出されることはまずない。事故直後は出たが、牛の飼料を輸入物に変えたらしい。この点は悩むところ。例えば、無農薬・有機栽培だがセシウムが少し含まれる野菜と、農薬がかかっているがセシウムは含まれていない野菜を比べたとしたら、今のレベルなら、自分なら前者を選ぶ。
(6)給食で東京都産の野菜や東京湾の魚が出される。これらの食材をたんぽぽ舎で測ったことはあるか?→手元にデータはないが、昨年3、4月は放射性物質が検出されていた。今も、測れば検出されるのではないか。ただし、葉物野菜などからは検出されないかもしれない。総じて、東京での地産地消はよくないと考える。特に、東京湾の汚染はそもそもひどいので、東京湾の魚はあまりよくないのではないか。
(7)新宿区内の汚染は気にしなくてもいいのではとのことだが、子どもが通う幼稚園の園庭が土であるため、汚染が気になる。遊ばせていいのか心配である。泥などに触らずに、普通に遊んだら問題ないのか?

「問題ない」の意味による。測ってみなければ何ともいえないが、0.05~0.06マイクロシーベルト/時なら誤差の範囲だろう。気になるのは仕方ないが、追加調査を実施するにはお金がかかる。土壌の汚染度を測れる機器は高価であり、別のことにお金を使った方がいいとの考えもある。
(8)区内の公園で地表5センチの高さで0.1マイクロシーベルト/時の値が出る。このくらいの数値なら子どもを普通に遊ばせてもいいと個人的には思うか?

→個人的にはそう思う。
(9)目黒区のテニスコートでは1,000ベクレル/kgくらいの数値をたたき出しているらしい。また、300ベクレル/kgの運動場で一日運動した子どものユニフォームからピークが出ていたとの話も聞いている。事故前は、都内平均で2ベクレル/kgくらいだった。このような数字に東京都や国が危機感を持っていない。特に東葛の自治体は本当に動こうとしていない。

金がかかることは行政がやるべきである。放射線は検出しやすいゆえに、問題を複雑にする。どこかで線を引くべきではある。300~500ベクレル/kgという値は、農薬を使った食べ物を食べるか否かというような問題。ただ、すでに化学物質の汚染が積み重なっているところに、放射線をあえて取り込む必要もないだろう。
(10)ウクライナ製のsoek(ガイガーカウンター)を使っているが、高い値を計測している。また、0.3で警報音が鳴る。

まず、ガイガーカウンターとサーベイメーターでは使用目的が異なる。ガイガーカウンターは何かあったら逃げろ!と警告するために、誤差があったら高めに出るようになっている。警報音がデフォルトで0.3になっているとしたら、それは低めの設定だと思う。ずっと鳴り続けたら逃げてもいいと思うが、通り過ぎたくらいでは大丈夫。ウクライナでは1ミリシーベルト/年を超えると避難する権利が与えられていた。そのために、ウクライナ製のガイガーは高めに出るのかもしれない。もっとも、避難する権利の付与は、家などが私有ではなかった旧共産国だからできたことだった。


4.対話学習会を終えての感想
原田さんはバランス感覚に優れた方だと感じました。

長年、脱原発問題に関わってこられているものの、母親たちの不安や危険をあおることは一切ありませんでした。

お話の中で何度も「測ってみなくてはわからない」とおっしゃっていましたが、

憶測で不安がるのではなく、実際に測って数値を見て判断することの大切さを改めて認識しました。

また、放射線のリスクだけを過大評価するのではなく、他の有害な化学物質や農薬等の影響も考え合わせながら生活していく必要があることも強調されていらっしゃいました。

一年経ったとはいえ、福島第一の事故の衝撃はいまだに大きく、どうしても放射性物質のことだけに焦点を当ててしまいがちですが、近視眼的になりすぎてはバランスを欠いてしまうと気づかされました。対話学習会に参加して下さった方々からも、「不安をあおりすぎず、スタンスもはっきりしているのでお話が聞けてよかった」「私だったらこうするという具体的な話が大変参考になった」「安全とリスクのバランス、それに発生する費用とストレスについて考えられたよい機会だった」「日頃、ツイッター等で情報過多になっていて不安だったが、今日の話を聞いてどのように情報を見たらよいかという目安ができた気がする」といった感想をいただきました。

最後に、原田さんが「今回の事故を受けて、差別が起こってはならない」とおっしゃっていたのが心に残りました。